コラム

弁護士北山祐記のコラムです。

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弁護士の着手金・報酬金・実費とは?

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1,着手金とは
お客様が弁護士に仕事を依頼する場合に最初に払う費用で、弁護士の活動費にあたります。
着手金は、依頼した仕事の結果にかかわらず、原則として返ってきませんから、注意が必要です。
弁護士から、裁判に勝てる見込みがどの程度あるのか、裁判に勝てた場合でも、相手から回収できる見通しがあるのか等について、十分に説明を受けた上で、契約をして、着手金を払うのが望ましい形です(これを「事件の見通し」と呼びます。)。
民事裁判の被告になっているケースで、相手(原告)の請求が理にかない、敗訴が確実なケースで、金額の減額も望めない場合などは、弁護士に委任するメリットは殆どありません(裁判所に代理出頭してくれるメリットと和解で多少減額が可能になる可能性、分割払いの可能性等のメリットはありえますが・・・・)。
 当事務所も一部で採用している着手金無料(ゼロ円)という表示をよく見かけますが、これは、あとで説明する報酬金が「かなりの確率で得られる」と見込まれる場合に設定されていると判断下さい(簡単に言えば、着手金の「後払い」ということです。)。過払い金の請求や加害者に任意保険会社がついている場合の交通事故賠償金請求等がこれに該当します。

2,報酬金とは
 裁判に勝訴して相手方から金銭を取得した場合や裁判の被告の代理人として弁護士が戦い、相手の請求額から減額することができた場合に「経済的利益(原告の場合は「回収額」、被告の場合は「減額した額」)」に応じて弁護士がお客様に請求する金銭のことです。
 弁護士や事件の内容によって異なりますが、標準が経済的利益の5パーセントから20パーセントプラス消費税で、諸事情により、増減します。契約する場合に気をつけて、チェックをして下さい(特に裁判の被告の場合で、請求されている金額が大きい場合には、裁判に勝訴しても、弁護士の高額な成功報酬金が発生するケースがありますのでご注意ください。)。
 また、事案によっては、経済的利益がない場合でも報酬金が設定される場合もありますので、契約にあたっては弁護士から十分に説明を受けて下さい。

3,実費とは
 弁護士が依頼された業務を行う上で生じる費用のことで、裁判所に納付する印紙代や(破産の場合の)予納金、交通費、郵便代、宿泊費、証人尋問における証人に対する報酬、お医者様の意見書作成費用等が代表的なものです。
また、出張などが必要な事件では、実費とは別に弁護士の日当が請求されることがありますので、遠方の事件を依頼する場合などは注意して下さい。
 私が弁護士になる前に聞いた笑い話ですが、頼んだ弁護士の先生が、東京駅から埼玉県の大宮駅に出向くのに新幹線のグリーン車で出かけて、その費用を請求された等の話もあります。長期間の裁判や遠方の裁判を依頼した場合などには、この実費や弁護士日当は洒落にならない金額になりますので、注意して下さい。
裁判は「生き物」で相手方の対応速度や新証拠の出現などによって(訴訟の進行につれ、)見通しが大きく変わってくることがあります。
 そのような裁判を遂行するにあたって、弁護士費用まで、大きく変動することになれば、お客様が予算の見通しを立てることが非常に難しくなります。
 ホットライン法律事務所の法律相談で、明瞭化された弁護士費用をぜひ体感下さい。

2019年08月05日

弁護士に頼むと一般的にどのくらいの費用がかかるの?

 

第1、弁護士報酬規程

平成16年3月までは「弁護士報酬規定」なるものが存在していたため、全国的に弁護士に頼んだ場合の費用は明確だったといえます。
 もっとも、この弁護士報酬規定が無くなってから弁護士登録をした私がこの報酬規定を見た場合、「高すぎる。」という印象を持っています。大きな会社等が弁護士に依頼する際の料金だと考えれば合理的に見えることもあるのですが、生活者の感覚には合致しない金額です。旧弁護士報酬規定の基本的な考え方は、訴額(訴訟で請求したり、請求されたりする金額)に比例して、弁護士の着手金と報酬金が上昇する仕組みになっており、例えば、労災で一家の柱を失った家族が高額な訴額の訴訟を起こしたりする場合には、単純計算をすると「とても払えない」着手金になってしまうのです。もっとも、報酬規定が存在した過去においても、労災で一家の柱を失った家族等の資力が乏しい依頼者等には、心優しい弁護士が着手金部分については手弁当等で対応してきたことも多かったと思いますので、必ずしも資力が乏しい依頼者が裁判を起こせなかったわけではありません(勝訴額が高ければ弁護士の報酬金の額は多くなります。)。
 いわゆる規制緩和の流れにのり、この弁護士報酬規定が廃止されたことで、そして、弁護士の増員が進み競争が激化したことで、弁護士費用の平均価格は下がってきていると感じます。
 もっとも、過去の遺物である弁護士報酬規定に基づき弁護士費用を算定する弁護士が今でも存在しますし、一律に弁護士費用が下がったわけではありません。また、値段の高低と弁護士の質や熱意は相関もないため、お客様にとって弁護士選びが難しいことには変わりありません。
 結局、最終的には弁護士に面談した後で、お客様自身が弁護士の質・熱意を見極め、値段を確認した上で、最終決定すべきでしょう。

第2、弁護士選びのコツ

 私が考える弁護士選びの注意点をいくつか列記いたしますので、よろしければ参考にして下さい。

①弁護士と必ず面談し、その説明がわかりやすいか、で判断する(説明がわかりやすい人は、裁判所でも説得がうまいと考えていいでしょう。)。
②初回相談は、どうしても事件の内容が中心的話題になりますが、発注する前に値段を必ず確認すること(事件の内容に夢中になって、弁護士費用を確認せずに発注してしまう方が多いと感じます。)。
③値段が高いと思ったら頼まない勇気を!(弁護士は一部の地域を除いてたくさんいます。)
④日本司法支援センター(法テラス)と民事法律扶助の契約をしている弁護士かどうかを事前に確認する。

第3、法テラスを利用した場合の弁護士費用の概略

【重要】
 冒頭で私は、弁護士報酬規定を「高すぎる。」と一刀両断にしましたが、法テラスが定める弁護士報酬の基準は、弁護士から見て「かなり安い」ものです。

※ただし、離婚事件は、①離婚、婚姻費用・養育費、監護権者・親権者の争い、面会交流等のメニューが多くなること、②調停で解決しない場合は、審判や訴訟に移行すること等の理由により、法テラスを利用した場合に逆に弁護士費用が高くなる場合もあるため、注意が必要です。

法テラスの民事法律扶助の制度は、一定の資力要件を満たす人に利用資格が限定されますが、弁護士費用を立て替えてくれる上、全国一律かつ低額の弁護士費用で弁護士を利用できる制度で、多くの方が利用されています。
そして、高すぎる過去の弁護士報酬規定に対し、法テラスの弁護士料金は、現在の弁護士費用の「裏スタンダード」とも呼べるものですので、弁護士と値段の交渉をすることが億劫な方は、法テラスと契約している弁護士に依頼し、民事法律扶助を利用すれば、少なくとも弁護士に過大な費用を請求される心配はありません。
 とりわけ、冒頭で述べた高額な訴額の訴訟の場合でも、法テラスの場合、弁護士着手金の上限があり、しかもかなり安いのです。やむを得ず、高額な訴額の訴訟を起こさざるを得ない方は、法テラスの民事法律扶助の利用をぜひ検討下さい。
 なお、民事法律扶助制度の詳しい内容は法テラスのホームページ等で確認下さい。

第4、原告側の弁護士の概略
 弁護士着手金は一般的に、訴額に応じて高くなる料金体系を取っている弁護士が多いと思います。
 例えば訴額が200万円ならば、着手金20万円~30万円(消費税別途)で、訴額が2000万円ならば、着手金50万円~100万円(消費税別途)という感じになります。
 しかし、私は、この慣習に大いに疑問を感じています。なぜなら、着手金は、弁護士が活動するための対価といって良いと思いますが、弁護士の活動に必要な労力や時間は、この訴額には全く連動しないのです。
 例えば貸金請求事件や過払金返還請求事件の場合、訴額が2000万円であろうと、弁護士に要求される労力や時間は、比較的にわずかなものです。
 一方で、セクハラや医療訴訟等の損害賠償請求事件(不法行為と呼ばれるもの)の場合、訴額が仮に200万円でも、証人尋問の準備、医療カルテの読み込み・翻訳等、弁護士の労力と時間は相当のものが要求されます。
 ですから、私はさきほど、弁護士料金が高いか安いか、お客様が見極める必要があると申しましたが、実際には裁判の「内容」も詳細に検討しないと、弁護士費用が妥当なものかどうかも本当は判断できないのです。

第5、まとめ
 というわけで、私の結論は、当コラムを読んでいただいた方には恐縮ですが、適切な弁護士費用の算出は難しいということです。
 しかし、面談をした弁護士が弁護士費用について丁寧な説明を行い、その価格にお客様が納得できるのであれば、契約書にサインして良いと考えます(当たり前ですが、説明と契約書の内容が異なっていないかどうか、必ずチェックして下さい。)。

 ホットライン法律事務所(北海道札幌市所在)では、受任する前に弁護士費用を明確に説明することをモットーとしています(報酬金はパーセントか、定額で設定します。)。
 なぜなら、弁護士は事件を解決するのは当然のこととして、お客様が納得できる値段で紛争解決を実現することが今、求められていると考えるからです。そして、値段に関する説明はお客様に発注いただく段階で出来なければ意味がありません。

2019年08月05日

裁判の勝敗の決め手になるものは何か?

「裁判の勝敗は弁護士で決まる!」と言いたいところですが、それは違うと思います。結論から言うと、裁判に勝つために最も重要なものは「証拠」です。
裁判は、簡単に説明すると、法律的な「主張」と、それを裏付ける「証拠」を明らかにすることで進んで行きます。例えば、過払い金請求事件などの多くは、その主張が決まっており、証拠もほぼ自動的に揃ってしまうので、弁護士にとっては極めて簡単な仕事と言えるのです。
 法律的な主張は、弁護士の法的知識や法的センスが要求されることもあり、この点からは弁護士の能力が重要なポイントになるのですが、多くの訴訟で出てくる主張は、それほど驚くようなものはありません。むしろ、驚くような主張をしなければならない時点で、その当事者は相当に苦しい状況に置かれているということになります。
原告と被告の主張が揃ったところで、その主張を基礎付ける証拠が精査されるわけですが、どちらか一方の当事者が信頼できる書面等(貸金の借用書・売買契約書・不倫の証拠写真・交通事故における実況見分調書・帳簿・銀行の振込送金票等)を裁判所に提出できると、その当事者は有利な立場に立ち、その相手方はその証拠から強く推測される事実を打ち消すのに大変な労力を使う必要がありますし、覆せる可能性はかなり低いです。
ただし、前記の有力な証拠は、必ずしもお客様が弁護士に持ち込んだものが全てではなく、弁護士がその資格を活かして調達し、その熱意をもって分析するタイプのものもあるのです(「銀行の取引履歴」、医療訴訟・労災訴訟・交通事故の訴訟等における「医療カルテ」・「医療文献」などが代表的なものです。)。
お客様が持ち込んだ証拠だけで勝利が予測される事件は、それで良いのですが、勝敗の見通しが不透明な事件では、弁護士が労を惜しまず、この作業にエネルギーを注げるか、ということが重要になります。
たしかに「勝った・負けた」ということは、お客様にとって重要なことですが、勝って当然の事件、負けて当然の事件も多く存在します。弁護士が、先に述べた証拠の収集・分析に力を発揮し、裁判に勝ったのならば、それは弁護士の勲章ですし、お客様はその弁護士を評価すべきだと思います。
一方で、弁護士がお客様の集めた証拠だけで、漫然と裁判を戦い、敗訴したならば、それは弁護士の怠慢と評価できます。
 仮に、弁護士が追加で集められる証拠が全くないと事前に予測されていたのであれば、その弁護士は、お客様に対して、「勝ち目がない、あるいは、勝つことは相当難しいが、それでも弁護士に委任しますか?」と事前に説明すべきでした。
この業界では、「勝ち筋」「負け筋」という言葉を使うことがありますが、多くの訴訟は事前に、勝ち負けが予測されており、裁判の途中で、強力な証拠が追加提出されない限り、結果は予想通りのことが多いものです。
 弁護士も一人の自営業者ですから、お客様に対し、負け筋であることを秘して、着手金を取りにいくこともあると思います。
 したがって、お客様は、勝敗について、ある程度の見通しを聞き取った上で、発注すべきです。
法律相談等で、明らかな負け筋の場合に、私がその事実を伝えると残念そうな顔をされる方が多いですが(たぶん、冷たい弁護士だな、と思われています。)、負け筋であることを秘して着手金をお客様から得ることは、正しいことだと思っていませんし、お客様にとっても、無駄なお金を使わずに済んだという点で良いことだと思っています。
もっとも、私が負け筋であることを説明した上で、お客様から真実を明らかにして欲しい、やれるだけやって欲しいと懇願された結果、私が受任し、証拠を徹底収集・分析し、裁判で勝訴できた事案もあります。
そういう点からは、最初から勝ち負けが決まっているわけではないのですが、弁護士に着手金を払って訴訟を起こす、または、訴訟を受けて立つということの「メリットとリスク」について弁護士は事前に十分過ぎるほど説明をすべきだと考えています。
 ホットライン法律事務所(北海道札幌市所在)では、お客様がお持ちの証拠を精査し、お客様のお話を丁寧に伺うことで、受任する前に勝敗の見通しを立て、説明するように心掛けています。

2020年09月13日